「ワイルドインベスターズのブログ」から
以下引用

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AIIB(アジアインフラ投資銀行)の「創設メンバー」締め切りは今日2015年3月31日です。日本政府は正式に見送りを発表しました。
これはきわめて順当な判断です。日本と米国が中心となって50年近く実績をあげてきたADB(アジア開発銀行)をさしおいて、中国の独断でカネを動かすAIIBに参加する理由はありません。



一部の日本メディアは「バスに乗り遅れるな!」「日本は孤立する!」「創設メンバーとしてのメリットがなくなる!」と騒いでいましたが、カモがバスに乗らなかったので落胆していることと思います。

英独仏などの欧州諸国は、「中国に決定権があるなら、日本製品を使ったり日本企業には発注しない」ということを期待していると思います。創設メンバーになろうが100兆円拠出しようが、中国が日本にメリットを与えることはありません。おいしい部分のほとんどは中国が持って行くにしても、中国企業ができない部分は欧州諸国がやることになるでしょう。中国側も「日本にだけ損をさせて、我々で甘い汁吸いましょうや」ぐらいのことを言って欧州諸国を誘ったはずです。

しかし日米が参加しないとなると、中国も欧州諸国も自分たちのカネを持ち出してアジア諸国に投資することになります。参加国が40以上と言ってもカネを貸す力があるのは中国・英・独・仏・デンマーク・豪州・サウジぐらい。他の国は借りる側なのでいくら増えても中国の利益とはならず、むしろ損をしてしまいます。他人のカネを私物化したい中国にとって、これでは何のためにAIIBを作ったのかわかりません。

だから申請期限の今日を過ぎても、「日本と米国の参加を待ち続ける」と言っているのです。カモが乗るまでバスは発車しないということです。

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中国の楼継偉財【北京時事】中国の楼継偉財 【北京時事】中国の楼継偉財政相は20日、同国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に関して談話を発表し、今月末の申請期限を過ぎても、日本と米国の参加を待ち続けると表明した。(2015/03/20-23:32)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201503/2015032001017
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ではなぜ、中国が他人のカネの私物化を狙っていると言い切れるのか? 

第一の証拠は、そもそもAIIB設立のきっかけにさかのぼります。中国がADBの出資比率を上げて発言権を得ようとしました。しかしこれに米国と日本が難色を示したため、AIIB設立を宣言したと言われています。

ここまで聞くと、「なんだADBはアメリカと日本の息がかかっていて、日本の財務省天下り先じゃないか」と思います。実際その通りなんですよ。

しかしアジアでは預ける人を間違えると、公金がどこかに消えてしまうリスクが非常に高いのです。公金を預けて安心なのはカネを貸し付けている先進国、そしてアメリカはアジアではないとなると、消去法で日本ぐらいしか残りません。たとえば欧州復興開発銀行(EBRD)総裁はフランス人とドイツ人しかやったことないですが、私はそれに文句を言おうとは思いません。アジアでは日本人以外に代わりがいないというだけです。

しかし中国はADBの総裁をやりたいと言ったようです。たとえば銀行の全資産から25%も借りている最大債務者が「俺を頭取にしろ!」と言い出したらどうでしょう。

地位を利用して踏み倒す気マンマンだな、こいつ

としか思えません。少なくともそういう要求をするのはADBからの借金を返し、日本のODAを断ってからにしてくれと思うはずです。

つまり中国はADBの乗っ取りと私物化に失敗したため、AIIBという別組織を立ち上げて揺さぶりをかけてきたということです。



証拠の第二は、北朝鮮の参加を断ったことです。

表向きの理由は「金融と経済体系が国際金融機構に参加する水準に至っていない」とのことですが、それなら「今は即答できないが、創設メンバーや資金が揃ってから検討する」と言えば済む話。しかしそうしないのは今の北朝鮮が北京政府と敵対関係にあるからです。おまけに資金を借りる側なので、中国政府にとっては特に邪魔者なのです。

これはAIIBが民主的で透明な手続きで仕事をする組織ではないことを示しています。北京の一存で参加国を決められるのであれば、どのプロジェクトに融資するか、どの企業に発注するか、どの銀行に資金をプールするかもすべて中国政府次第。私物化のための銀行なのですから他国に利益が回るはずありません。



証拠の第三は、日米のたび重なる「公正なガバナンス(統治)確保」の説明要求に答えていないことです。要するに「インチキしないという証拠を出せ」と言われているのに、無視を決め込んでいます。公正にしたらインチキできないので、出せるはずがありません。



さて、AIIBは時間が経つほど困った状況になります。

欧州各国はAIIBが本当にインフラ投資をするのだと思っていて、その「おこぼれ」を狙っています。カモである日本が乗って来ないのでは、中国がカネを出さなくてはなりません。

いずれ欧州企業もAIIBが詐欺ファンドであることに気付くでしょう。拠出した資金がシャドーバンキング巨額損失の穴埋めに使われたり、持ち逃げされたり、帳簿がデタラメであることが発覚するのもそう遠くありません。そのときになってなぜ日米が参加しなかったのかを知ることになります。

あるいは米国に睨まれて脱退する国が出て来るかもしれません。オバマがあんな人なので舐めているのかもしれませんが、私が米国財務省国防省なら同盟国のAIIB参加は制裁に値する裏切り行為と考えます。ADBの出資を突き返し、米国市場から締め出し、ドルスワップを解消し、泣きながら謝って来るまで許しません。英豪韓は米国を頼りにしているくせに、どこか甘えている節があります。

私が中国であれば、実体がバレる前にADBとAIIBの統合を持ちかけるかもしれません。どうせ最初からADB私物化が狙いだったので、中身のないAIIBを失っても惜しくはありません。妥協の産物として「ADB総裁の地位」や「ADB改革と称する利権奪取」が可能になるなら上出来です。オバマはまんまと引っかかりそうですが、日本は米財務省と協力してこれを阻むべきでしょう。



ではなぜ、日本はADBの利権を死守すべきなのか?

日本の財務省天下り先だからではありません。

ドル基軸体制を支える数あるインフラのひとつだからです。

ドル基軸体制は軍事同盟と並ぶ、米国覇権の柱です。

それを脅かす者は、ことごとく葬り去られて来ました。

それを格下の同盟国ごときが手放したり、敵に渡してしまうなど、言語道断なのです。

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